医中誌の基本的な特徴をもとに、医療経済研究論文検索のための検索式を立案した。今回対象とした主題は以下の7領域である。
一般的に、検索結果を評価する基準として、「感度 sensitivity=再現率」と「陽性適中率 positive predictive value=適合率」という考え方がある。感度とは、データベース中に収録されている特定主題に適合するすべてのデータのうちで実際に検索できたデータの 割合を意味し、陽性適中率とは、検索することができた全データのうち、検索主題に合致しているデータの割合を意味する。
理想的には、感度と陽性適中率がともに100%になること、すなわち検索モレがなく、非適合文献(ノイズ)も含まれないことであるが、実際には、この両者 はトレードオフの関係にあり、一方が高ければ、他方が低くなるため、どちらを重視するかによって検索式/検索語の選定の考え方が異なる。今回の検索式の選 定においては、各領域について実際にいくつかの検索を行い、領域ごとに検索の考え方を事後的に決めている。
検索式立案にあたっては、医中誌Web版より1987年1号から2002年6号まで3,801,954件を対象に試行検索を行った(データ最終更新日:2002年6月10日)。検索は2002年6月11日(火)、17日(月)に行った。
シソーラス用語では、それぞれ医療経済学/TH、健康政策/THであるが、健康政策、公衆衛生政策、薬事行政などについては、今回の主題からは除くことに した。また、検索結果をみると、抄録中には「医療経済」や「医療政策」の語句が含まれているものの、必ずしもそれらが主題とはいえない論文が多いため、陽 性適中率を重視した検索式とし、タイトル中に「医療経済」、「医療政策」の語が用いられているものを検索することとした。さらに、臨床経済学・薬剤経済学 との重複を除くため、「臨床経済学」・「薬剤経済学」を除いた。
医療技術の経済評価に関する論文の検索を目的としている。試行検索の結果、原著論文が多い領域であることから、感度を重視した検索式とした。そこで、分析 手法を表す「費用-効果分析」などや、「QALY=Quality Adjusted Life Year(s)」、「WTP=Willingness to Pay」のような成果算出手法も検索語に加えた。また、関連領域として、費用分析、疾病費用研究なども加えたが、「QOL=Quality of Life」は、範囲が広がりすぎるため除いている。
なお、この領域については、「技術評価」、「テクノロジーアセスメント」、「社会経済学的評価」などの用語が用いられることもあるが、前2者については、 経済評価以外も含むことが多いこと、「社会経済」での検索語でのヒットはなかったことから除いている。より感度の高い検索を必要とする場合には、これらの 語も加えた検索を実施する必要がある。
医療費について言及した論文は極めて多く、タイトル中にも「医療費」と記載されていても、必ずしも医療費に関する緻密な分析を行っている文献とはいえない ものがかなりあった。そこで、陽性適中率を重視し、タイトル中に「医療費」、「医療支出」および「医療財政」が表出されている「原著論文」のみを検索する ことを目的とした。
医療保障制度、医療保険制度についての論文が対象となるが、医療制度改革への意見論文などの時事的側面の強い論文が多いため、陽性適中率を重視し、タイト ル中に関連用語の表出されている論文のみを検索することとした。ただし、制度についての解説的なものも含める意味があるものと考え、原著論文のみを対象と することはしなかった。
本領域と関連し、重要と思われる用語として「保険者」、「保険者機能」が考えられたが、検索を行った結果、ノイズが多いため、今回は対象としなかった。
診療報酬、薬価に加え、診療報酬算定において関連すると思われる原価についても含めることとした。いずれも陽性適中率を重視した。「診療報酬」について は、「診療報酬改訂において医療機関がどのように対応すべきか」といった経営指導的な論文が多く、これらを除くため、タイトル中に「診療報酬」が表出され ている「原著論文」のみを検索対象とした。「薬価」、「原価」についてはタイトル中に対象用語が表出されている論文をすべて検索対象とした。
医業経営には、病院経営、診療所経営、薬局経営などが含まれ、内容的にも人事政策など広範な概念が含まれている。シソーラス用語では「病院管理学」であ り、検索件数も膨大になる。そこで、今回は、医業経営のうち、特に収支面、財務面についての研究論文を検索することを目的とし、原著論文のみを検索対象と した。
医療関連ビジネスとしては、製薬企業、医薬品流通を対象とすることとした。
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