平成11年度 調査・研究実績

1−6  諸外国の医療保障制度に関する研究

1-6-1 ドイツ医療保障制度に関する調査研究

(1)調査研究の種類
社会保険診療報酬支払基金による委託調査研究

(2)調査研究目的
  日本の医療保険制度の手本となったドイツの医療保障制度と近年の一連の改革は、我が国の医療保障制度改革における議論において、参考としてたびたび取り上げられてきており、非常に示唆に富むものと思われる。
  そこで、継続的にドイツの医療保障制度に関するデータを蓄積し、近年の医療制度改革などの最新情報をフォローするとともに、その成果を積極的に外部へ情報発信していくことを目的として、同国の医療保障制度に関する調査研究を行った。

(3)調査研究の方法および具体的内容
  研究会での論点整理および事務局による資料収集を併せて、ドイツ医療保障制度の制度概要および医療保障制度関連の資料集を作成していく方式を指向した。

(4)調査研究の結果
  平成11年度においては、人口、経済、医療費、疾病金庫、医療提供体制、薬剤等に関連した52項目を整理した医療保障制度関連のデータ集、医療制度改革など最新情報を含んだ制度概要および薬剤給付制度に関する調査を成果物としてまとめた。また、併せてドイツ社会・医療保障関連用語集も作成した。

(5)調査研究体制

(座 長) 土田 武史 (早稲田大学商学部教授)
(委 員) 大河内 二郎 (産業医科大学公衆衛生学教室助手)
高智 英太郎 (健康保険組合連合会社会保障研究室長)
田中 耕太郎 (山口県立大学社会福祉学部教授)
府川 哲夫 (国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部長)
舩橋 光俊 (国民健康保険中央会常任理事)
(アドバイザー) 松本 勝明 (厚生省社会援護局 施設人材課 福祉人材確保対策室長)
三石 博之 (厚生省年金局運用指導課長補佐)
(担 当) 久保田 健 (医療経済研究機構研究員)
前濱 隆広 (医療経済研究機構研究員)
佐野  毅 (医療経済研究機構研究員)
(所属等については平成12年3月末現在)

(6)研究成果
    ドイツ医療保障制度に関する調査研究報告書
    (「ドイツ医療関連データ集【1999年版】」)


1-6-2 フランス医療保障制度に関する調査研究

(1)調査研究の種類
  社会保険診療報酬支払基金による委託調査研究

(2)調査研究目的
  フランスの医療保障制度と近年の一連の改革は、同じ社会保険方式をとる我が国の医療保障制度改革における議論にとって非常に示唆に富むものと思われる。
  そこで、継続的にフランスの医療保障制度に関するデータを蓄積し、近年の医療制度改革などの最新情報をフォローするとともに、その成果を積極的に外部へ情報発信していくことを目的として、同国の医療保障制度に関する調査研究を行った。

(3)調査研究の方法および具体的内容
  研究会での論点整理および事務局による資料収集を併せて、フランス医療保障制度の制度概要および医療保障制度関連の資料集を作成していく方式を指向した。

(4)調査研究の結果
  平成11年度においては、人口、経済、社会保障費、疾病保険、医療提供体制、薬剤等に関連した46項目を整理した医療保障制度関連のデータ集、医療制度改革など最新情報を含んだ制度概要、および薬剤給付制度に関する調査を成果物としてまとめた。

(5)調査研究体制
(座 長) 藤井 良治 (千葉大学法経学部教授)
(委 員) 岩村 正彦 (東京大学法学部教授)
加藤 智章 (新潟大学法学部教授)
田坂 治 (国立生活金融公庫環衛融資部長)
久塚 純一 (早稲田大学社会科学部教授)
松田 晋哉 (産業医科大学公衆衛生学教室教授)
(アドバイザー) 伊奈川 秀和 (九州大学法学部助教授)
江口 隆裕 (厚生年金基金連合会運用部長)
(担 当) 久保田 健 (医療経済研究機構 研究員)
齋藤 直人 (医療経済研究機構 研究員)
佐野 毅 (医療経済研究機構 研究員)
 
(所属等については平成12年3月末現在)

(6)研究成果
フランス医療保障制度に関する調査研究報告書
(「フランス医療関連データ集【1999年版】」)


1-6-3 イギリス医療保障制度に関する調査研究

(1)調査研究の種類
  社会保険診療報酬支払基金による委託調査研究

(2)調査研究目的

  イギリスの医療提供体制は国の一般財源で費用の大部分をまかなう国営医療で、その内容は、わが国の社会保険方式の制度とは大きく異なっている。しかし、他の先進諸国と同様な諸問題を抱え、医療資源の効率的・適正な配分にとり組むわが国において、イギリスの医療保障制度とその改革には参考にすべき点も多い。
  そこで、継続的にイギリスの医療保障制度に関するデータを蓄積し、近年の医療制度改革などの最新情報をフォローするとともに、その成果を積極的に外部へ情報発信していくことを目的として、同国の医療保障制度に関する調査研究を行った。

(3)調査研究の方法および具体的内容

  研究会での論点整理および事務局による資料収集を併せて、イギリス医療保障制度の制度概要および医療保障制度関連の資料集を作成していく方式を指向した。

(4)調査研究の結果

  平成11年度においては、人口、経済、医療費、医療提供体制、薬剤等に関連した36項目を整理した医療保障制度関連のデータ集、労働党政権が打ち出した医療制度改革など最新情報を含んだ制度概要および薬剤給付制度に関する調査を成果物としてまとめた。

(5)調査研究体制

(座 長) 池上 直己 (慶應義塾大学医学部教授)
(委 員) 姉崎 正平 (日本大学医学部教授)
荒井 由美子 (国立診療所中部病院長寿医療研究センター  
   介護・看護・心理研究室長)
一圓 光彌 (関西大学経済学部教授)
武村 真治 (国立公衆衛生院公衆衛生行政学部研究員)
(アドバイザー) 井上 恒男 (厚生省四国地方医務支局支局長)
小出  顕生 (厚生省大臣官房国際課課長補佐)
(担 当) 久保田 健 (医療経済研究機構 研究員)
佐野  毅 (医療経済研究機構 研究員)
矢野 美佳 (医療経済研究機構 研究員)
(所属等については平成11年3月末現在)

(6)研究成果
イギリス医療保障制度に関する調査研究報告書
(「イギリス医療関連データ集【1999年版】」)


1-6-4 スウェーデン医療保障制度に関する調査研究

(1)調査研究の種類
  社会保険診療報酬支払基金による委託調査研究

(2)調査研究目的
  制度面での共通点が少ないためか、これまでわが国の制度改革等の議論においてスウェーデンの医療保障制度が参考とされることは少なかった。しかし、スウェーデンに代表される北欧諸国は、福祉先進国として医療と介護の連携等、公的介護保険の導入を間近に控えたわが国にとって参考にすべき点も多い。
  そこで、スウェーデンの医療保障制度に関するデータを蓄積し、近年の医療制度改革などの最新情報をフォローするとともに、その成果を積極的に外部へ情報発信していくことを目的として、同国の医療保障制度に関する調査研究を行った。

(3)調査研究の方法および具体的内容
  研究会での論点整理および事務局による資料収集を併せて、スウェーデン医療保障制度の制度概要および医療保障制度関連の資料集を作成していく方式を指向した。

(4)調査研究の結果

  平成10年度においては、人口、経済、社会保障費、疾病保険、医療提供体制、薬剤等に関連した25項目を整理したスウェーデン医療保障制度関連のデータならびに北欧5カ国のデータ集と医療制度改革など最新情報を含んだ制度概要、および高齢者の医療と介護についてのトピック(高齢者社会への対応策〜エーデル改革と家族政策)、そして医療保障関連単語集を成果物としてまとめた。

(5)調査研究体制
(座 長) 岡澤 憲芙 (早稲田大学社会科学部教授)
(委 員)  斉藤 弥生 (大阪外国語大学外国語学部助教授)
藤井 浩司 (早稲田大学政治経済学部教授)
三上 芙美子 (東京国際大学経済学部教授)
(アドバイザー) 多田 葉子 (同志社大学文学部社会学科専任講師)
木下 淑恵 (東北学院大学法学部講師)
宇野  裕 (内閣外政審議室内閣審議官)
島崎 謙治 (厚生年金基金連合会運用調査部長)
井上 誠一 (内閣官房「21世紀日本の構想懇談会 担当室主幹」)
(担 当) 久保田  健 (医療経済研究機構 研究員)
安田 純子 (医療経済研究機構 研究員)
小泉 敦保 (医療経済研究機構 研究員)
佐野  毅 (医療経済研究機構 研究員)
(所属等については平成12年3月末現在)

(6)研究成果
  スウェーデン医療保障制度に関する調査研究報告書
   (「スウェーデン医療関連データ集【1999年版】」)


1-6-5 欧州主要各国のDRG導入実態に関する調査研究U

(1) 調査研究の種類
  医療経済研究機構自主研究事業

(2)調査研究目的
  DRG (Diagnostic Related Group) は、医療資源の必要度に応じて疾病を分類する手法として、1970年代に米国で開発された。現在、欧米各国では、病院に対する診療報酬の支払いや、病院の診療情報・経営情報の収集・分析等の用途に広く利用されている。我が国においても、中央社会保険医療協議会が診療報酬制度改革の一つとして、DRGに基づく支払方式の導入を検討し、厚生省は、平成10年から「急性期入院医療の定額払い方式の試行」を実施している。
  以上の状況を鑑み医療経済研究機構では、DRGの我が国への導入に関する示唆を得ることを目的に、平成10年度、および11年度にわたり、欧州におけるDRG導入について調査研究を実施した。平成10年度においては、医療制度・慣習の異なる欧州5ヶ国を選び、米国由来のDRGがどのように導入され、どう利用されているかについて実態調査を実施し、導入状況を把握した。

  平成11年度においては、DRGの我が国への導入実現性および導入のシナリオを作成するために必要な実務・実践的な事項に焦点を当てた調査分析を行なうこととした。

(3) 調査研究の方法および具体的内容
1) 予備調査
 下記調査項目に併せて文献調査を行なうと同時に、平成11年9月にデンマークで行われたPCS/E(欧州患者疾病分類プロジェクト)に出席し、欧州の状況について関係者から情報収集を行なった。
2) 現地調査
 下記の調査項目を含む調査票および対象になる関係機関・研究者を研究会で検討・作成した後、それに基づいてインタビューを行なった。また併せて委員会にて改変したFisherのDRG評価票も利用した。
3) 調査項目
@ DRG方式導入の経緯
・DRG導入のための主要な試行及び社会実験の内容とその結果
・上記試行及び社会実験の経費
A DRG方式運用のための関連組織とその業務の内容
・関連組織の種類とその業務内容
・各組織の予算
B DRG方式運用の実際
・DRG方式と支払方式との関係
・情報の流れ
・DRG導入維持管理コスト
C 将来の方向
対象国 :イギリス、フランス、ドイツ
(4) 調査研究の結果
1) 欧州各国におけるDRG方式導入の総括
図1は2年間にわたって調査を行なった各国を、ケースミックス分類の受け入れ可能性と支払方法への利用の形態によって、整理したものである。


図1 欧州各国のDRGの導入形態による分類

@ 分類の有効性の確認
  いずれの国においてもまずHCFA-DRGをベースとしてケースミックス分類導入可能性についての社会実験が5年から10年かけて行われている。社会実験導入開始時点において多くの国はICDの一般化が実現されていなかった。
  ベルギーやポルトガルのようにDRGの導入を前提としてICDの一般化を精力的に行った国と、HCFA-DRGの分類が自国の医療行為の慣行と大きく異なっているとの認識から別のケースミックス分類の開発に取り組んだイギリスやドイツのような国とに区分される。
  スウェーデンやノルウェイなどの北欧諸国ではHCFA-DRGの基本的な分類については受容可能であったが、主に外科領域での診療手技に米国のそれと大きな相違があり、この部分を修正したNord-DRGがその後導入されている。

A支払方式との組合せ
  第二段階ではケースミックス分類を支払い方式とどのように組み合わせるかによってこれらの国が区分される。
  イギリスの場合は病院医療費のコントロール自体は予算によって十分効果的に行われており、むしろ効率的かつ公正な配分にその主眼があったといえる。したがってHRGの利用目的も行われた医療サービスの内容に関する情報の透明化とそれに基づく評価に主眼が置かれている。
  同様にNHSの基本的枠組みをもつポルトガルの場合も、分類そのものはHCFA-DRGをそのまま導入しているが、支払い方式に関しては予算制を前提として50%をDRGでファイナンスするという仕組みになっている。
  ドイツはケースミックス分類を包括払いに利用しているが、主に外科領域のみで、一般化はできていない。1999年の連邦議会の議決を受けてケースミックス分類の一般化が行なわれることが決定されたが、FP/SEではそれが難しいと考えられることから、AP-DRGが採用されると予想されている。しかも、その利用方法としてはハンブルク州立病院群で行われていたような病院予算の配分における指標としてDRGが用いられると予想されており、これは現行のフランスの制度に類似したものになる。
  フランスの場合はHCFA-DRGのほぼ完全なコピーから始めて、漸進的に現在の制度へと移行してきた。HCFA-DRG試行初期における主な動機は同時期に導入された総枠予算制における予算配分のための指標開発であった。そして紆余曲折はあったもののICD分類使用の一般化、フランスにおける診療行為分類CdAMの作成、コストデータの作成などを、数次の社会実験を経て徐々に、DRG利用の一般化を達成している。そして、将来の方向としてONDAMという医療費の上限を前提として、DRG/PPS、予算制、民間病院における医師報酬の支払という3つを組み合わせた病院医療支払方式に移行することになっている。

B 成功の要因
  以上のように現在の欧州においてはDRGを予算方式と組み合わせて用いる方向が一般的になってきており、特に社会保険制度を採用しているドイツ、フランス、ベルギーでのこうした動向はわが国における今後のDRG方式の活用方法を考える上でも示唆に富むものである。DRG分類の一般化を基準とするとイギリス(HRG)、フランス(GHM)、ベルギー(AP-DRG)、ポルトガル(HCFA-DRG)、オーストリア(LKG)などがヨーロッパ諸国においてDRG導入に成功した国としてあげることができる。これらの国に共通している事項について整理すると以下のようになる。

@ HCFA-DRGなど既存のシステムによる試行
A 漸進的な導入
B ICD及び類似の疾病分類と診療行為分類の普及
C 財政方式とは切り離した初期導入:情報システムとして導入
D PPSではなく予算配分を目的とした広義の病院管理指標として利用
E 現場担当者、特に医師が計画初期から関与
F 医療機関における機能分化
G 公的病院中心の急性期医療体制
H 保険者(あるいは行政)の強いリーダーシップ

2) 
わが国におけるDRG方式導入の方向について
  2ヶ年にわたる欧州DRG調査の結果を踏まえて、今後のわが国におけるDRG導入に関して、下記7項目について、委員会としての見解を取りまとめた。
@ DRG方式の一般化の可能性について
A 標準的な疾病分類の一般化と情報管理部門の設立
B 漸進的な導入
C 病院の機能分化
D 情報の標準化
E 既存システムの導入か新規開発か
F DRGの海外調査に関する今後の検討課題

ところで、これまでわが国の研究者による海外制度研究は制度の正確な記述のみに終始しているものが少なくなかった。しかし、厳しい財政状況下に社会保障制度改革が喫緊の課題となっている、今日における今後の研究の方向としては、わが国の制度改革への応用を前提として、ベンチマーキング的な視点からの分析がより多く行なわれることが必要であると考える。その意味で医療経済研究機構などが中心となって主たる政策課題について比較制度研究のための基本的な枠組みを構築していくことが求められる。

(5) 調査研究体制

(座 長) 松田 晋哉 (産業医科大学公衆衛生学教室教授)
(委 員) 大河内二郎 (産業医科大学公衆衛生学教室助手)
武村真治 (国立公衆衛生院公衆衛生行政学部研究官)
アドバイザー
信友 浩一 (九州大学大学院医学研究科医療システム学教室教授)
武藤正樹 (国立長野病院副院長)
池田俊也 (慶応大学医学部医療政策・管理学教室専任講師)
今村英仁 (財団法人慈愛会副理事長)
梅田勝 (厚生省保険局医療課企画官)
北川博一 (厚生省保険局医療課課長補佐)
迫井正深 (厚生省保険局医療課課長補佐)
(担 当) 野口 一重 (医療経済研究機構主任研究員)
久保田 健 (医療経済研究機構研究員)
佐野 毅 (医療経済研究機構研究員)
矢野 美佳 (医療経済研究機構研究員)
大泉 洋一 (医療経済研究機構研究員)
前濱 隆広 (医療経済研究機構研究員)
(所属等については平成12年3月末現在)

(6) 研究成果
 「欧州主要各国のDRG導入実態に関する調査研究U」報告書 日本語版
同  報告書
英語版